第0話(後編) 心電図の扉をひらく ― 心電図のきほん

どんどん

こんにちは!

看護師歴12年目、現役循環器ナースのどんどんです。

この「心電図学園」は、“心電図が苦手なあなた”のために作った、やさしい物語形式の学習シリーズです。

今回のテーマは、P波・QRS波・T波って何?

そして、それをつくり出している**“心臓の電気の流れ”=刺激伝導系**について、

わかりやすく学んでいきます!

この記事では、杉山裕章医師の著書『心電図のみかた、考えかた【基礎編】』を参考にしています。

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目次

心電図の扉を開く-心電図の基本(後編)

(中庭のベンチに座るエーエフちゃん。うずうずしながら時計を見ている)

エーエフちゃん

サイナスくん、遅いなあ……。昨日、続き教えてくれるって言ってたのに~。

サイナスくん

お待たせ。授業が長引いちゃって。さて、昨日の続き、話そっか!

エーエフちゃん

うん!待ってたよっ!

P波・QRS波・T波の説明

サイナスくん

じゃあまず、P波・QRS波・T波が、心臓のどんな動きを表してるかを見ていこう!

この波形を見てごらん。

一番最初の小さな山、これがP波。

心房が収縮するときの波だよ。

エーエフちゃん

この小さな山が、心房がキュッと動いた合図なんだ~!

サイナスくん

そして、ドンッと大きな波。これがQRS波。

心室が収縮して血液を全身に送り出す、とっても大事な波なんだ。

エーエフちゃん

やっぱり目立ってる!力強さがぜんぜん違う~!

サイナスくん

最後がT波。心室が“ふう…”って、ひと休みして、次の動きに備えてるところなんだよ。

エーエフちゃん

T波って…お昼寝タイムみたいでかわいいね。おつかれさま〜って言いたくなるかも!

P波とT波の見分け方(とても重要!)

サイナスくん

さて、ここまででP波、QRS波とT波の話をしたけど……

実はね、T波とP波って、初心者にはすごく見分けにくいポイントなんだ。

エーエフちゃん

え!? たしかにどっちも、なんか“山”っぽい感じで……

正直、どれがどれかわからなくなってきたかも……

サイナスくん

大丈夫! とっても大事な見分け方のコツがあるんだ。

まず、覚えておいてほしいのは――T波は絶対にQRS波のあとにくるってこと!

エーエフちゃん

……ん? どうして?

サイナスくん

理由は簡単。心室が動いたあとには、必ず“回復”があるからなんだよ。

心室の動き(QRS波)と回復(T波)はセットなんだ。

順番が逆になることも、片方だけになることも、ないんだよ。

エーエフちゃん

つまり、QRS波を見つけたら、そのあとに出てくる山がT波ってことなんだね!

サイナスくん

その通り! 

だから、まずQRS波を見つける→そのあとに出てる波はT波。

そして、QRS波の前に出てて、しかもQRSにもT波にも当てはまらない波がP波なんだ。

エーエフちゃん

なるほど〜!

P波って“残った波”として見つければいいんだね!

サイナスくん

うん、この見分け方は心電図の基礎中の基礎だから、覚えておいて損はないよ。

P波の見つけ方

手順内容ポイントメモ
まずQRS波を見つける一番大きなギザギザの波。最も目立つので見つけやすい!
QRS波の直後の山をT波と判別するT波はQRSのすぐあとに出る。順番は“QRS → T”と固定
QRSでもT波でもない、小さな山を探す多くはQRSの前にある。これがP波!


心房にはお休みはないの?

エーエフちゃん

……でも、心室が休むなら、心房も休まないとかわいそうじゃない?

“心房のT波”って、ないの?

サイナスくん

うん、あるにはあるんだけどね。波が小さすぎて、QRS波にかくれちゃって見えないんだ。

エーエフちゃん

えぇ〜!?そんなの……心房、ちょっと不憫すぎるよ〜!

サイナスくん

たしかにね。見えないけど、ちゃんと休んでるから安心してあげて。

それよりも大事なのは、P波・QRS波・T波の“順番”。

この流れを覚えることが、心電図の第一歩なんだ。

じゃあ、ここまでの流れをまとめてみようか。

P波・QRS波・T波のまとめ

波形 なにを表している? 動いてる場所
P波 心房がぎゅっと縮んで、血液を心室に送る 心房
QRS波 心室がドンっと縮んで、全身に血液を送り出す 心室
T波 心室がふうっと休んで、次に備えて回復している 心室(回復)
エーエフちゃん

なるほど〜!“波形の意味”がわかってきたら、ちょっとずつ楽しくなってきたかも!

心臓が動く仕組み(刺激伝導系)

エーエフちゃん

でも…なんでそんなふうに、タイミングよく動けるの?

まるで、指揮者がいるみたい。

サイナスくん

いいところに気づいたね。

実は、心臓の中には電気の流れ道=刺激伝導系(しげきでんどうけい)っていう仕組みがあって、

その通り道に沿って電気が伝わることで、心臓が正しい順番で動いているんだ。

エーエフちゃん

電気の流れ道……?

うん。

たとえば、電気が最初に出る“洞結節(どうけっせつ)”は、まさに心臓の指揮者みたいな存在。

そこから順番に、心房や心室へ電気が伝わって、それぞれのタイミングで動いていくんだよ。

ちょうど表にまとめてみたから、一緒に見てみようか。

刺激伝導系の流れ

場所働き関連する波形
洞結節(どうけっせつ)電気のスタート地点。リズムを刻む“指揮者”
心房電気が伝わって、心房が収縮P波
房室結節(ぼうしつけっせつ)少しだけ“タメ”を作り、心房と心室の切り替えを調整
ヒス束〜右脚・左脚〜プルキンエ線維電気を左右の心室へ一気に伝えるルート
心室電気が届くと収縮し、その後に回復するQRS波(収縮)、T波(回復)
サイナスくん

こんなふうに、電気が順番通りに伝わっていくことで、

心房 → 心室 → 回復 っていう動きができて、

それが心電図では P波 → QRS波 → T波 っていう形で表れてるんだ。

エーエフちゃん

わあ…まさに電気のリレーだね!

それぞれの波に、ちゃんと意味があるんだってわかってきたかも。

サイナスくん

そう。心電図って、一見むずかしそうに見えるけど、

心臓の動きを“順番”で見てるだけなんだ。

だからまずは、このP波 → QRS波 → T波の流れをつかむことが大切なんだよ。

エーエフちゃん

うん、わたしでも少しずつ“読める”気がしてきたかも!

心電図って、ちょっと面白いかもね。

サイナスくん

ふふ、よかった。

 じゃあ、今日はここまでにしようか。

がんばりすぎず、ゆっくり覚えていけば大丈夫だよ。

エーエフちゃん

うん!ありがとう、サイナスくん!

心電図学園、物語のはじまり

どんどん

こうして心電図のしくみと、波形の意味を知ったエーエフちゃん。

P波、QRS波、T波――それぞれに、心臓からのメッセージが込められてたんだ。

ちょっと難しそうだった心電図も、すこしだけ身近に感じられたよね。

でも、これはまだ“はじまり”。

ここからが本当の“波形の物語”のスタート。

さあ、エーエフちゃんと一緒に、心電図の世界を旅していこう!

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管理人どんどん
はじめまして、管理人のどんどんと言います。 看護師12年目の循環器ナースです。 心電図がわからない新人、中途採用、病棟異動できた看護師さんに心電図を指導していますが、病棟勤務のため対面では十分に教える時間が取れないことから、ブログという形で心電図の見方を伝えられたらと思い始めようと思いました。ブログは初めてなので、少しずつ改善していこうと思います。長い目で見て頂ければ、徐々に良くなっていくと思うのでよろしくお願いします。