この記事では、大島一太医師の著書『これならわかる心電図の読み方』を参考にしています。
目次
不意打ちのドキッ!心房期外収縮(PVC)
――心電図学園、検査室モニター前にて。

ふぅ……洞調律ってわかって、安心した〜
心電図って、思ってたよりもちゃんと“読める”かも…?

ほっほっほ。安心して帰れるのう〜。あとはお昼ごはんじゃ


あれ?でも、これ……なんかさっきと違う波が混じってない?
なんか…タイミングが早いし、P波もちょっと変…?

えぇっ!?わし、もうダメなんかの!?

ち、ちがいますって!でも、なんか気になるんです!サイナスくんー!

……うん、これは**心房期外収縮(PAC)**だね

しんぼうきがいしゅく…?何それ?
心房期外収縮(PAC)ってどんな不整脈?

心房期外収縮はね、心房がフライングで動いちゃったときに起きる不整脈だよ
要は、“次の拍動を待ちきれずに、先に打っちゃった”って感じ

えっと……前に“洞結節がリズムを作る”って言ってたよね?
👉 ※そのときのお話はこちら『第0話(後編) 心電図の扉をひらく ― 心電図のきほん』

うん、覚えてたんだね。偉いよ。
あの洞結節がリズムを作る前に、心房が勝手に動いてしまう――それが、心房期外収縮なんだ。

ってことは、ちょっとだけ“せっかち”な心房ってこと?

まさにそれ。リズムを乱す“おせっかい者”って感じだね。

心房期外収縮の特徴

それで、心房期外収縮にはいくつかの特徴があるんだ。


まずひとつめ。洞調律のリズムよりも早いタイミングで打つんだ。
リズムがそろってる中に、ひとつだけ“あれ、ちょっと早くない?”って拍があるだろ?

あ、本当だ……この拍、前よりちょっとだけ早く出てる気がする!


ふたつめは、P波の形がふだんと違うこと。心房から出てるけど、洞結節からじゃないから、波形も少し形が変わるんだよ。

たしかに、この山だけ、なんかトゲトゲして見える……


そしてみっつめは、QRS波の形は正常と同じってこと。
幅も細くて、心室まではちゃんと伝わってる証拠だね。おおよそ3マス未満になってるのがポイントかな。

P波がちょっと変で、QRSはいつも通り……ふむふむ……

こういう特徴がそろってたら、それは“心房期外収縮”。
心房がちょっとだけ“せっかち”になった拍なんだよ。

なるほど……ちょっとせっかちな心房が、いつもと違うP波で早めに動いちゃったんだね……!

うん。いま説明したことを、表でまとめておこうか。復習にもなるからね
📝 心房期外収縮(PAC)の特徴まとめ
特徴 | 内容 |
---|---|
① リズムより早く出る | 洞調律の拍よりも、早いタイミングで出現する |
② P波の形が違う | P波はあるが、洞結節からでないため形が異なる |
③ QRS波は正常 | QRS波の幅は3マス未満で、形も通常と同じ |
この波形、異常?それとも様子見でOK?

でも、これって……大丈夫なの? 異常な波形ってことだよね?

そう思うよね。でも、ほとんどの場合は症状もなくて、経過観察で大丈夫なんだ。
特に高齢の方にはよくあるし、ひとつ見つけただけで慌てる必要はないよ。

そうなんだ……じゃあ、この患者さんも、安心して大丈夫なんだね。

ありがとねぇ。若いのに、よう頑張っとるなぁ
次回予告


……あれ? サイナスくん、今の波……さっきの心房期外収縮とは違うよね?
なんだか……もっとドカン!って大きい感じ……

おっと、あれは心房からじゃなさそうだね。もっと下のほう……心室あたりが勝手に動いちゃったのかも。

ワシ、そんなに色々出とるのかい? なんか、すまんのう……
第3話「ドカンと大きな一拍…その正体は? ― 心室期外収縮(PVC)―」

洞調律でも心房期外収縮でもない、インパクトのある波形。その謎に迫る!
こんにちは!
看護師歴12年目、現役循環器ナースのどんどんです。
この「心電図学園」は、“心電図が苦手なあなた”のために作った、やさしい物語形式の学習シリーズです。
今回のテーマは「心房期外収縮(PVC)」です。