一目でわかる!Ⅲ度房室ブロックをざっくり解説


こんにちは!
看護師歴12年目、現役循環器ナースのどんどんです。
このブログでは、心電図が苦手な看護師さん向けに、心電図の参考書を読む前の参考書をコンセプトに1記事10分程度で読めるように、やさしく・わかりやすく解説しています!
さて、今回は「Ⅲ度房室ブロック(完全房室ブロック)」
をテーマに解説していきます!
この記事では、佐藤弘明先生の本『レジデントのためのこれだけ心電図』を参考にして進めていくよ。
目次
- 一目でわかる!Ⅲ度房室ブロックをざっくり解説
- Ⅲ度房室ブロックって何?
- なんで心臓は止まらないの?
- 脈拍が遅いとどうなるの?
- どんな特徴があるの?
- どんな症状が出るの?
- 治療は何をするの?
- 今回のまとめ
Ⅲ度房室ブロックって何?


エーエフちゃん、この波形は何だと思う?

えっ……? すごく脈が遅いね。
うーん、徐脈性の洞調律かなぁ?
正解は何なの〜?

正解は“Ⅲ度房室ブロック”。
別名“完全房室ブロック”って呼ばれているんだ。

Ⅲ度房室ブロック!?
名前は聞いたことあるけど……どんな不整脈なの?

簡単に言うとね、心房と心室の間で電気がまったく伝わらなくなってしまう状態なんだ。

えっ、それってどういうこと?

普段はさ、洞結節が“司令塔”みたいに命令(電気信号)を出して、その合図が心房に伝わってから、房室結節っていう“中継点”を通って心室に届くんだよね。


うんうん、そこまではわかる!

洞結節からの合図が房室結節で止まって、その先の心室に伝わらなくなったら、どうなると思う?


えっと……洞結節から心房には伝わるけど……あれ?
その先の心室に命令が届かないね……これは大変だ!!

そう、その“大変な状態”になっちゃってるのがⅢ度房室ブロックなんだ。
心房と心室の間で電気がまったく伝わらなくなる状態
なんで心臓は止まらないの?

でも、心室に命令が届いてないのに、何で心臓は動いているの?

それはね、心臓には“控えの選手”みたいな細胞がいるからなんだ。
洞結節から命令が来なくても、“じゃあ自分たちでリズムを作ろう”って動き出すんだよ。


えっ!? そんな仕組みがあるんだ!
じゃあ命令がなくても心臓は完全には止まらないってこと?

そうそう。これを“補充調律”って呼ぶんだ。
房室接合部(房室結節やヒス束)や、心室自体が勝手に動き出して心拍を保ってくれるんだよ。
でもね、そのスピードはとても遅いから、脈拍は30〜50回/分くらいまで下がってしまうことが多いんだ。
心室は、洞結節からの命令が途絶えても、房室接合部(房室結節やヒス束)、心室にいる“控えの選手”が補充調律として動き出すため、心臓は完全には止まらずに動き続けます。
脈拍が遅いとどうなるの?

なるほど……!
命をつなぐためのバックアップはあるけど、脈拍がすごく遅いんだね。
脈拍が遅いとどうなるの?

脈拍が遅すぎると、全身に送られる血液が足りなくなっちゃうんだ。
だから、めまいや息切れ、意識がなくなる失神なんかを起こすことがあるよ。

えぇっ!? 倒れちゃうこともあるの!?

そうなんだ。
Ⅲ度房室ブロックは“完全に心房と心室のつながりが切れている状態”だから、補充調律だけに頼るとすごく不安定。
放っておくと命に関わる危険があるんだよ。

だから放置は絶対NGなんだね。
聞いてるだけでも怖い……!

そのとおり。
じゃあ次は、Ⅲ度房室ブロックの“特徴”を見ていこうか。
Ⅲ度房室ブロックになると、心房と心室のつながりが途絶えてしまい、心室がゆっくりしか動けなくなります。
すると体に送られる血液が足りなくなって、めまいや息切れ、倒れてしまうこともあるんです。
どんな特徴があるの?

特徴は3つあって、
まず1つ目は、P波とQRS波が連動せずに、それぞれバラバラに出てくることなんだ。
普段ってP波のあとにはQRS波が来るよね?


うんうん!
だから心電図を見ると“P波の次には必ずQRS波”って思ってたけど……
それがバラバラになるってこと!?

そう、心房と心室の間で命令が途切れてるから、P波のあとにQRS波が来るっていう関係が崩れちゃうんだ。


なるほど……!

そして2つ目は、PP間隔もRR間隔もそれぞれ一定なんだ。

PP間隔ってP波と次のP波の間隔のこと、RR間隔はQRS波から次のQRS波までの間隔のことだよね?

その通り!
PP間隔が一定なのは、洞結節から心房への流れは正常に行われているからなんだ。
だからP波は一定間隔で出てるんだよ。


じゃあ、QRS波が一定なのはどうして?

さっき話した“補充調律”が出ているからなんだ。
バックアップである補充調律はほとんど一定のリズムで出るから、RR間隔も一定になるんだよ。


うんうん!
そういえば補充調律は脈拍が遅いって言ってたよね?

よく覚えてたね! そのとおり。
だから、3つ目の特徴は、“脈拍数がすごく遅くなる”ことなんだ。
だいたい30〜50回/分くらいになってしまうんだよ。

- P波とQRS波がバラバラに出現(心房と心室の命令が途切れているため)
- P-P間隔、R-R間隔はそれぞれ一定(洞結節と補充調律がそれぞれ独立して動いているため)
- 脈拍数は30〜50回/分と著しい徐脈(補充調律は遅いリズムしか作れないため)
どんな症状が出るの?

ふむふむ……特徴はよくわかったよ!
でもさ、実際にⅢ度房室ブロックになると、患者さんってどんな症状が出るの?

いい質問だね。
さっき“脈拍が遅いとどうなるの?”で話したんだけど、Ⅲ度房室ブロックは補充調律で心臓を動かしているから、心拍が30〜50回/分くらいにまで落ちちゃうんだ。
そうすると全身に送られる血液が足りなくなって――
- めまい(脳に十分な血液が届かない)
- 息切れ(体に酸素が回らない)
- 強い倦怠感(全身の血流不足)
- 失神(さらに心拍が遅くなったり止まったりすると起きやすい)

こんな症状が出ることがあるんだよ。

えぇっ!? 失神までしちゃうの!?
倒れたりしたらすごく危ないね……!

そうなんだ。
Ⅲ度房室ブロックは“完全に心房と心室のつながりが切れている状態”だから、補充調律だけじゃ心拍が安定しない。
だから放っておくと命に関わる危険があるんだよ。
- 補充調律で動くため脈拍は 30〜50回/分程度まで低下
- 血液が十分に送れず、めまい・息切れ・倦怠感が出やすい
- さらに心拍が遅くなると、**失神(アダムス・ストークス発作)**を起こすことがある
- 放置すると 命に関わる危険 があるため注意が必要
治療は何をするの?

命に関わる危険があるなんて……怖すぎるよ!
そんな時って、どうやって治療するの?

いい質問だね。
Ⅲ度房室ブロックは“補充調律”でかろうじて心臓が動いているけど、とても不安定だから、治療が必須なんだ。

必須ってことは、薬でどうにかするの?

薬も一応は使うよ。
たとえばアトロピンは副交感神経の働きを抑えて、心拍数を一時的に上げる効果があるんだ。
でも、Ⅲ度房室ブロックでは“心房から心室への通り道”が完全に切れてるから、効果はあまり期待できないことが多いんだよ。

なるほど……! “効けばラッキー”って感じなんだね。

その通り。
だから根本的な治療は、ペースメーカーの植え込みなんだ。
人工的に安定した電気信号を送って、確実に心室を動かしてあげるんだよ。

ふむふむ……ペースメーカーってやっぱり重要なんだね!

そうそう。
あと、緊急時にはペースメーカーを入れるまでのつなぎとして、経静脈ペーシングといった一時的ペーシングを行うこともあるんだよ。
- 薬(アトロピンなど)で心拍数を上げることもあるが、効果は限定的
- 根本治療は恒久的ペースメーカーの植え込み
- 緊急時は一時的ペーシング(経静脈ペーシングなど)でつなぐ
今回のまとめ

今回の内容をまとめるね。

- **Ⅲ度房室ブロック(完全房室ブロック)**は、心房と心室の間で電気がまったく伝わらなくなる不整脈。
- 波形の特徴は、
① P波とQRS波が連動せずにそれぞれバラバラに出現する
② P-P間隔・R-R間隔がそれぞれ一定である
③ 心拍数は30〜50回/分程度の強い徐脈になる - 洞結節からの命令は心室に届かないが、補充調律によって心室はかろうじて動き続ける。
- ただし脈拍が遅いため、めまい・息切れ・失神などの症状を起こすことがある。
- 薬(アトロピン)は一時的に効くこともあるが、根本治療はペースメーカー植え込み。緊急時には一時的ペーシングでつなぐ。

なるほど……!
波形の特徴と症状、それに治療まで全部つながった感じで理解できたよ!

そうそう。
心電図で“PとQRSがバラバラに出て、脈がすごく遅い”ってなったら、完全房室ブロックを疑うサインだから覚えておこうね。

Ⅲ度房室ブロックは怖い不整脈だけど、特徴・症状・治療を押さえれば理解しやすいです。
大事なのは波形に慌てず、まず患者さんの状態を確認すること。
今回はここまで!おつかれさまでした〜
完璧じゃなくていいんです。少しずつ覚えていきましょう!

心房と心室の間で電気がまったく伝わらなくなる不整脈
① P波とQRS波が連動せずにバラバラに出現する
② PP間隔・RR間隔がそれぞれ一定
③ 心拍数30〜50回/分の強い徐脈
めまい・息切れ・失神など
・根本治療はペースメーカー
・緊急時は一時的ペーシング