この記事では、杉山裕章先生の本『心電図のみかた、考え方』を参考にして進めていくよ。
目次

ねえ、サイナスくん。ST変化が高いとか低いとかって、いったい何と比べて言ってるの?

いいところに気づいたね。実は、それを判断するときに使うのが“電位の基準線”なんだ

電位の基準線……?なんだか難しそう……

大丈夫。わかりやすく説明していくから安心してね
1)基準の2点を探そう


電位の基準線って、どうやって決めるの?

まずは“T波の終わり”と“QRS波の始まり”を探すんだ

T波の終わりとQRS波の始まり……?

うん。T波の終わりは心室が休んで落ち着く最後のところ。QRS波の始まりは心室が動き始める最初のところだよ。この2点が基準線を作るカギになるんだ

なるほど、2つの点を見つけるんだね!
2)2点を結んでラインにしよう


“T波の終わり”と“QRS波の始まり”を結んだ線を“T-QRSライン”って呼ぶんだ。この線が、ST変化を比べるときの基準線になるんだよ

へぇ〜!この線が基準線になるんだね
3)どうしてラインが基準なの?


でも、なんでこの線が基準になるの?

いい質問!この線は基本的に平坦だから、“ゼロ点”としてST変化を比べるのにぴったりなんだ

なるほど〜!だからSTが高いか低いかは、このT-QRSラインと比べればいいんだね
4)判断に迷ったらJ点!


サイナスくん、もしST部分がよく分からないときはどうすればいいの?

そんなときに頼りになるのが“J点”だよ

あ、S波の“鋭い波”から“なだらかなカーブ”へ移る境目のところだね!

そうそう。そのJ点を目印にして、T-QRSラインと比べて高いのか低いのかを見れば、ST変化を判断できるんだ

なるほど〜!迷ったらJ点を探せばいいんだね
5)1mmまではセーフ!

でもサイナスくん、STって少しでも上がったり下がったりしてたら、全部異常なの?

実はね、STの上昇も低下も**1mm以内なら“許容範囲”とされるんだ

えっ、1mmまでは大丈夫なんだ!

うん。正常な人でも呼吸や体位、電極の貼り方でちょっとした上下はあるからね。だから1mmまでは“生理的な変化”として問題ないことが多いんだ

なるほど〜。じゃあ本当に注意すべきなのは、1mmを超えてるかどうかなんだね

その通り!ST変化を読むときは、“1mmを超えてるかどうか”**が大事なポイントになるよ
6)今回のまとめ

じゃあ、今回学んだことをまとめるね
- ST部分の基準は「T波の終わり」と「QRS波の始まり」を結んだ T-QRSライン。
- この線は平坦なので、**ST変化を比べる“ゼロ点”**として最適。
- ST部分が分かりにくいときは、J点を目印にする。
- J点とT-QRSラインを比べることで、STが上がっているのか下がっているのかを判断できる。
- STの上昇や低下は1mm以内なら許容範囲とされる。

ふぅ〜、だいぶ分かってきた気がする!でも……STが高いときって、心臓では何が起きてるの?

じゃあ次は、”STが高いとどうなるのか”を、一緒に見ていこうか

ST変化を判定するカギは“J点”と“T-QRSライン”。この2つを知っておくだけで、ST変化の見かたはグッと分かりやすくなるよ。次回は、STが高いときに心臓で何が起きているのかを、一緒に見ていこうね!
こんにちは!
看護師歴12年目、現役循環器ナースのどんどんです。
このブログでは、心電図が苦手な看護師さん向けに、心電図の参考書を読む前の参考書をコンセプトに1記事5分程度で読めるように、やさしく・わかりやすく解説しています!
今回は、”ST変化を計測するための基準線”についてお話ししていきます。
「STが高い?低い?って、いったい何と比べているの?」と思ったことはありませんか?
その答えになるのが、今日のテーマである“電位の基準線”です。