この記事では、杉山裕章先生の本『心電図のみかた、考え方 応用編』を参考にして進めていくよ。
目次
①労作性狭心症とST低下


ST低下ってどんなときに出るの?

まず代表的なのが 労作性狭心症。心臓の血管が75%くらい狭くなってると起こるんだ

えっ、そんなに狭くなってても普段は大丈夫なの?

安静時は心臓が使う酸素が少ないから、血流はギリギリ足りて症状は出ないんだよ

じゃあ、どういうときにST低下が出るの?

運動したり、階段や坂道を上ったりすると心臓はもっと酸素を欲しがる。
でも血管が狭いと酸素が足りなくなって、胸の圧迫感や息切れと一緒にST低下が出るんだ

なるほど!動いたときだけ症状もST低下も出るってことなんだね

そう。そして厄介なのは、症状が落ち着くとST低下も消えてしまうこと。
だから“症状があるときにすぐ12誘導を取る”のがすごく大事なんだ

タイミングを逃さないことがポイントなんだね!

- 労作性狭心症=症状があるときだけST低下
- 症状が消えると心電図も正常化 → 見逃しやすい
② ST低下は日常的に多い

でも、ST低下ってけっこうよく見る気がするんだけど?

その通り!実は ST低下はST上昇よりも遭遇する頻度が圧倒的に多いんだ。
でもね、安静時のST低下は必ずしも狭心症を意味するわけじゃないんだよ

えっ、そうなの?

うん。たとえば──
- 非特異的ST-T変化(特別な病気がなくても出る軽い変化)
- 左室肥大や脚ブロック
- ジギタリス製剤の服用
- 頻脈性不整脈
こういう原因でもST低下は出るんだ。
だから“ST低下=すぐ狭心症!”と慌てなくて大丈夫。

なるほど。ST低下を見ても、落ち着いて観察することが大事なんだね!
- 安静時のST低下はよくある所見
- ST低下があっても落ち着いて観察しよう
③ 不安定狭心症は要注意

じゃあ、もし安静にしてるのに胸の症状があって、そのときにST低下が出てたらどうなの?

その場合に可能性が高いのが 不安定狭心症 なんだ。
冠動脈が90〜99%とかなり狭くなっていて、安静にしていても血流が足りずに胸痛や息切れが出ることがあるんだよ。
こういうときに見逃しちゃいけない疾患がまさに“不安定狭心症”なんだ」

えっ、それってすごく危ないんじゃ…?

その通り。不安定狭心症は“心筋梗塞の一歩手前”の状態。放っておくと心筋梗塞に進展する危険が高いんだよ

じゃあ、安静時ST低下+症状がある場合はすぐに対応が必要なんだね!
- 不安定狭心症は安静時でもST低下
- 心筋梗塞直前の危険な状態なので要注意!
④ なぜSTが低下するの?

うーん…どうして狭心症だとSTが下がるの?

そこに気づいたのは鋭いね!
ただ、その理由を説明しようとすると“活動電位”とか“損傷電流”といった難しい電気生理の話になっちゃうんだ

じゃあ今はどうすればいいの?

大事なのは、難しい理屈じゃなくて、
『狭心症ではST低下が出る』 って知っておくこと。

よかった〜!今はシンプルに覚えておくことにする!
- ST低下の理由は専門的で難しい
- 今は「狭心症ではST低下が出る」と覚えておけばOK
今回のまとめ

じゃあ今回の内容を整理してみよう!
- 労作性狭心症:症状があるときだけST低下。症状が出たらすぐ12誘導!
- ST低下は日常的に多い:非特異的ST-T変化や左室肥大、脚ブロック、薬剤、頻脈性不整脈など。ST低下があっても落ち着いて観察しよう
- 不安定狭心症:安静時ST低下+症状 → 梗塞直前の危険な状態
- なぜ下がるのか?:理由は難しいので、今は「狭心症=ST低下」と覚えればOK

ST低下ってよく出るけど、全部が狭心症じゃないんだね!
でももし狭心症や梗塞だったら、どう動けばいいの?

そこが一番大事なんだ。次回は“ST変化を見つけたときの対応”について解説していくよ!

今回は ST低下=狭心症のサインにもなるけど、多くは他の原因でも見られる というお話でした。
特に労作性狭心症と不安定狭心症は見逃せないポイントです。
次回は“ST変化を見つけたときにどう動くか”を一緒に学んでいきましょう!
こんにちは!
看護師歴12年目、現役循環器ナースのどんどんです。
このブログでは、心電図が苦手な看護師さん向けに、心電図の参考書を読む前の参考書をコンセプトに1記事5分程度で読めるように、やさしく・わかりやすく解説しています!
今回は 「STが低いとどうなるの?」 をテーマに解説していきます。