この記事では、杉山裕章医師の著書『心電図のみかた、考えかた【基礎編】』を参考にしています。
目次
心電図の扉を開く-心電図の基本(後編)
(中庭のベンチに座るエーエフちゃん。うずうずしながら時計を見ている)

サイナスくん、遅いなあ……。昨日、続き教えてくれるって言ってたのに~。

お待たせ。授業が長引いちゃって。さて、昨日の続き、話そっか!

うん!待ってたよっ!
P波・QRS波・T波の説明、

じゃあまず、P波・QRS波・T波が、心臓のどんな動きを表してるかを見ていこう!
この波形を見てごらん。
一番最初の小さな山、これがP波。
心房が収縮するときの波だよ。


この小さな山が、心房がキュッと動いた合図なんだ~!

そして、ドンッと大きな波。これがQRS波。
心室が収縮して血液を全身に送り出す、とっても大事な波なんだ。


やっぱり目立ってる!力強さがぜんぜん違う~!

最後がT波。心室が“ふう…”って、ひと休みして、次の動きに備えてるところなんだよ。


T波って…お昼寝タイムみたいでかわいいね。おつかれさま〜って言いたくなるかも!
P波とT波の見分け方(とても重要!)


さて、ここまででP波、QRS波とT波の話をしたけど……
実はね、T波とP波って、初心者にはすごく見分けにくいポイントなんだ。

え!? たしかにどっちも、なんか“山”っぽい感じで……
正直、どれがどれかわからなくなってきたかも……

大丈夫! とっても大事な見分け方のコツがあるんだ。
まず、覚えておいてほしいのは――T波は絶対にQRS波のあとにくるってこと!


……ん? どうして?

理由は簡単。心室が動いたあとには、必ず“回復”があるからなんだよ。
心室の動き(QRS波)と回復(T波)はセットなんだ。
順番が逆になることも、片方だけになることも、ないんだよ。

つまり、QRS波を見つけたら、そのあとに出てくる山がT波ってことなんだね!

その通り!
だから、まずQRS波を見つける→そのあとに出てる波はT波。
そして、QRS波の前に出てて、しかもQRSにもT波にも当てはまらない波がP波なんだ。


なるほど〜!
P波って“残った波”として見つければいいんだね!

うん、この見分け方は心電図の基礎中の基礎だから、覚えておいて損はないよ。
P波の見つけ方
手順 | 内容 | ポイントメモ |
---|---|---|
① | まずQRS波を見つける | 一番大きなギザギザの波。最も目立つので見つけやすい! |
② | QRS波の直後の山をT波と判別する | T波はQRSのすぐあとに出る。順番は“QRS → T”と固定 |
③ | QRSでもT波でもない、小さな山を探す | 多くはQRSの前にある。これがP波! |
心房にはお休みはないの?

……でも、心室が休むなら、心房も休まないとかわいそうじゃない?
“心房のT波”って、ないの?

うん、あるにはあるんだけどね。波が小さすぎて、QRS波にかくれちゃって見えないんだ。

えぇ〜!?そんなの……心房、ちょっと不憫すぎるよ〜!

たしかにね。見えないけど、ちゃんと休んでるから安心してあげて。
それよりも大事なのは、P波・QRS波・T波の“順番”。
この流れを覚えることが、心電図の第一歩なんだ。
じゃあ、ここまでの流れをまとめてみようか。
P波・QRS波・T波のまとめ
波形 | なにを表している? | 動いてる場所 |
---|---|---|
P波 | 心房がぎゅっと縮んで、血液を心室に送る | 心房 |
QRS波 | 心室がドンっと縮んで、全身に血液を送り出す | 心室 |
T波 | 心室がふうっと休んで、次に備えて回復している | 心室(回復) |

なるほど〜!“波形の意味”がわかってきたら、ちょっとずつ楽しくなってきたかも!
心臓が動く仕組み(刺激伝導系)

でも…なんでそんなふうに、タイミングよく動けるの?
まるで、指揮者がいるみたい。

いいところに気づいたね。
実は、心臓の中には電気の流れ道=刺激伝導系(しげきでんどうけい)っていう仕組みがあって、
その通り道に沿って電気が伝わることで、心臓が正しい順番で動いているんだ。

電気の流れ道……?

うん。
たとえば、電気が最初に出る“洞結節(どうけっせつ)”は、まさに心臓の指揮者みたいな存在。
そこから順番に、心房や心室へ電気が伝わって、それぞれのタイミングで動いていくんだよ。
ちょうど表にまとめてみたから、一緒に見てみようか。
刺激伝導系の流れ

場所 | 働き | 関連する波形 |
---|---|---|
洞結節(どうけっせつ) | 電気のスタート地点。リズムを刻む“指揮者” | ― |
心房 | 電気が伝わって、心房が収縮 | P波 |
房室結節(ぼうしつけっせつ) | 少しだけ“タメ”を作り、心房と心室の切り替えを調整 | ― |
ヒス束〜右脚・左脚〜プルキンエ線維 | 電気を左右の心室へ一気に伝えるルート | ― |
心室 | 電気が届くと収縮し、その後に回復する | QRS波(収縮)、T波(回復) |

こんなふうに、電気が順番通りに伝わっていくことで、
心房 → 心室 → 回復 っていう動きができて、
それが心電図では P波 → QRS波 → T波 っていう形で表れてるんだ。

わあ…まさに電気のリレーだね!
それぞれの波に、ちゃんと意味があるんだってわかってきたかも。

そう。心電図って、一見むずかしそうに見えるけど、
心臓の動きを“順番”で見てるだけなんだ。
だからまずは、このP波 → QRS波 → T波の流れをつかむことが大切なんだよ。

うん、わたしでも少しずつ“読める”気がしてきたかも!
心電図って、ちょっと面白いかもね。

ふふ、よかった。
じゃあ、今日はここまでにしようか。
がんばりすぎず、ゆっくり覚えていけば大丈夫だよ。

うん!ありがとう、サイナスくん!
心電図学園、物語のはじまり

こうして心電図のしくみと、波形の意味を知ったエーエフちゃん。
P波、QRS波、T波――それぞれに、心臓からのメッセージが込められてたんだ。
ちょっと難しそうだった心電図も、すこしだけ身近に感じられたよね。
でも、これはまだ“はじまり”。
ここからが本当の“波形の物語”のスタート。
さあ、エーエフちゃんと一緒に、心電図の世界を旅していこう!
こんにちは!
看護師歴12年目、現役循環器ナースのどんどんです。
この「心電図学園」は、“心電図が苦手なあなた”のために作った、やさしい物語形式の学習シリーズです。
今回のテーマは、P波・QRS波・T波って何?
そして、それをつくり出している**“心臓の電気の流れ”=刺激伝導系**について、
わかりやすく学んでいきます!