この記事では、大島一太先生の本『これならわかる心電図の読み方』を参考にして進めていくよ。
目次
心電図学園へ

――校門をくぐった瞬間、胸がドクンと高鳴った。
(ここが、心電図学園……
全国から選ばれた人たちが集まる、憧れの学校)
(私だって、本当は自信なんかない。
前の学校じゃ、落ちこぼれで終わるはずだった。
でも――ここで変わりたい)
……よし。
私、ここで変わってみせる。
春の風に、決意の声が吸い込まれていった。
心電図とは何か?
みなさん、今日から始まる“心電図学”の授業へようこそ。
まず最初に――心電図って、何だと思いますか?

心電図とは、心臓が“今、ちゃんと働いているか”を確認するためのツールです。
心臓は“電気の信号”で動いていますが、その電気がきちんと流れているかどうかを見るのが心電図。
波の形を見れば、“異常があるかどうか”がわかります。
じゃあ……異常があるかどうかが分かると、どうなりますか? ――久遠さん。
急変や、命に関わる事態にすぐに対応できます。
その通りです。
心電図を読めると、危ない波形にいち早く気づけます。
だからナースや医師にとって、心電図を読む力はとても大切なスキルになるんです。
(危ない波形にいち早く……か。
私も、そんなふうに頼られる存在になれるのかな……なりたい、けど。
よし、とにかく置いていかれないように頑張らなきゃ!)
心電図とは?
- 心臓が“今、ちゃんと働いているか”を確認するためのツール。
- 心臓の“電気の流れ”を波の形で見える化したもの。
- 波の形を見ることで、異常の早期発見や命を守る判断につながる!
心臓の仕組みの基礎 〜心房と心室ってなに?〜
この授業では、まず心臓について学んでいきましょう。
ここに来る方々ならわかっていると思いますが、心臓の仕組みについておさらいしてみましょうか。
(わ、私……心臓の構造とか……ちょっとあやふやだ……
大丈夫かな、ちゃんとついていけるかな……)

まず、心臓は“4つの部屋”に分かれています。
上の部屋が“心房”、下の部屋が“心室”です。
(うん……名前は聞いたことある。)
この“心房”が、全身や肺から戻ってきた血液をいったん受け取る部屋。
そして、“心室”が、その血液をギュッと送り出すポンプの部屋です。
(へぇー!
じゃあ、心房は“準備係”、心室は“本番のポンプ役”ってことかも!)
もう少し細かく説明しますと――
- 右心房 …… 全身から帰ってきた血を受け取る
- 右心室 …… その血を肺に送り出す
- 左心房 …… 肺から戻ってきた血を受け取る
- 左心室 …… その血を全身に送り出す
この順番で、心臓の中を血液が流れていきます。
……そして、心電図はこの心房と心室の動きを表しているんです。
(えっ!? じゃあ、あの線って……心臓の動きをそのまま描いてるってこと!?)
心房と心室の役割をおさらい!
- 心房(右・左)= 血液の“受け取り係”
- 心室(右・左)= 血液の“送り出し係”
- 上の部屋(心房)が準備して、下の部屋(心室)が力いっぱい押し出す!
- この順番と力の流れが崩れると、心電図にも異常が現れる!
それでは次に、この線の意味と“刺激伝導系”について説明しますね。
この線の意味は――心臓の中で電気がどのように伝わっていくかを……
その後の授業は、どんどん専門用語が飛び交っていった。
授業終了後

教室を出たミトは、ぐったりと肩を落とす。
(難しすぎて、全然わからなかった……。
こんな最初でつまずくなんて、私、本当にここでやっていけるのかな……)
足取りも重く廊下を歩いていると、不意に冷たい声が背後から刺さった。
さっきの授業もまともに理解できないなら、この学院にいる意味はない。
お前みたいな奴が、なんでこの学院にいるんだ。
振り返ると、そこに立っていたのは同じクラスの久遠シズマだった。
真っすぐな視線で見下ろされ、言葉が出ない。
(えっ、何この人……急に来て、ひどくない?
でも……言ってることは、たしかに正しいのかもしれない……)

放課後の校舎の外。
近くに置かれたベンチに腰を下ろし、ミトはノートを開いたまま、膝の上に顔をうずめていた。
(私、本当にやっていけるのかな……)
夕方の風が、ページをひらひらとめくっていく。
その時――足音が近づき、そっと立ち止まる気配がした。
……大丈夫?
ふいにかけられた優しい声に、ミトが顔を上げる。
そこに立っていたのは――。
第1話・終
次回予告

次回の心電図学園はね――
ベンチで落ち込んでるミトの前に、誰かがそっと現れるんだ。
その出会いをきっかけに、
P波・QRS波・T波の意味とか
**心臓が動く仕組み(刺激伝導系の基礎)**の世界に、少しずつ足を踏み入れていくよ。
第2話「動き出すリズム」
― P波・QRS波・T波の意味と、刺激伝導系の基礎 ―
ここから、ミトの学びがゆっくりと動き出していくんだ――。
次も楽しみにしててね。
こんにちは、どんどんだよ!
看護師歴は12年目。ふだんは循環器ナースとして働いてます。
この「心電図学園」はね、
心電図がちょっと苦手だなぁって思ってる人のために作った、やさしい物語形式の学習シリーズなんだ。
今回のテーマは、「心電図とは何か? 心臓の仕組みの基礎」。
一緒に、少しずつやっていこうね。