この記事では、杉山裕章先生の本『心電図のみかた、考え方』を参考にして進めていくよ。
目次
ST変化に気づくコツは“仲間探し”

ST変化を見つけても、それが合ってるのか不安なんだけど…

じゃあ今回は“ST変化を見つけたときに、より精度を上げられる方法”について勉強していこうか

お願いします!

例えばⅡ誘導でST変化を見つけたとしたら、次にどの波形を見る?

とりあえず全部見るかな。でも、そうすると逆にわからなくなって自信なくなるんだよね

そうだよね。でも、そういう時は“Ⅱ誘導の仲間”を探すんだよ

仲間?Ⅱ誘導に仲間なんているの?

前に12誘導は“4つのグループ”に分けられるって話をしたの覚えてる?
同じグループの波形は形が似ていて、一緒に変化することが多いんだ。
だから仲間をチェックすると、ST変化に気づく精度がグッと上がるんだよ

なるほど〜!仲間を確認すれば、もっと自信を持ってST変化に気づけそうだね!

じゃあ、その4つのグループを紹介するね
- 12誘導には 4つのグループ(仲間) がある
- 同じグループの波形は形が似ていて、一緒に変化しやすい
- 気になる波形を見つけたら → 同じグループをチェック!
心臓を4方向からのぞいてみよう!

その4つのグループって一体なに?

じゃあ、12誘導心電図を“見る場所”ごとに分けた4つのグループを紹介するね。
このグループっていうのは、心臓をどの方向から見ているかで決まるんだ

へぇ〜!どんな分け方になるのか気になるなぁ!

一つ目は、心臓の下の方を見ている“下壁グループ”。
二つ目は、心臓の横を見ている“側壁グループ”。
三つ目は、心臓の前を見ている“前壁グループ”。
そして最後、ちょっと特別な“aVR”に分けられるんだ

へぇ〜!心臓をいろんな方向から見てるんだね!
- 12誘導は 下壁・側壁・前壁・aVR の4つに分けられる
- 心臓をどの方向から見ているか が基準
- 場所を意識すると「どこに異常があるか」がイメージしやすい
下からのぞく!下壁グループ

まずは“下壁グループ”。これは Ⅱ・Ⅲ・aVF の3つだよ

下壁ってことは、心臓の下を見てるってこと?

その通り!心臓の下側を観察しているんだ。
そして──もし下壁にST変化が出ていたら、“右冠動脈(RCA)が詰まっている可能性”が高いんだよ。
こんなふうに心電図の変化を見れば、虚血や梗塞の原因を推測する大事なヒントになるんだ
- 下壁グループは Ⅱ・Ⅲ・aVF
- 心臓の下側を見ている
- ST変化が出たら“右冠動脈の閉塞”を疑うサイン!
横からチェック!側壁グループ

次は“側壁グループ”。ここには Ⅰ・aVL・V5・V6 が入るんだ

側壁って、心臓の横を見てるってこと?

そう!心臓の左側、いわゆる横の壁を観察しているのがこの4つなんだ。
ここにST変化が出ていたら──左冠動脈の回旋枝(LCX)が詰まっている可能性を考えるよ。
- 側壁グループは Ⅰ・aVL・V5・V6
- 心臓の左側(横の壁)を見ている
- ST変化が出たら“回旋枝(LCX)の閉塞”を疑うサイン!
正面勝負!前壁グループ

次は“前壁グループ”。これは V1〜V4 だよ

前壁ってことは、心臓の前を見てるんだね!

そうそう。心臓の前側、特に左室の前壁部分を観察しているんだ。
ここにST変化が出ていたら──左前下行枝(LAD)が詰まっている可能性を考えるよ。
しかもこの領域は心臓のポンプ機能に直結するから、梗塞になると致死的不整脈が出やすくて重症化しやすいんだ
- 前壁グループは V1〜V4
- 心臓の前側(左室前壁)を見ている
- ST変化が出たら“左前下行枝(LAD)の閉塞”を疑うサイン!
- 梗塞が起きると 致死的不整脈が出やすく、重症化しやすい
クセモノ!?特別ポジションaVR

最後は“aVR”。これはちょっと特別なんだ

特別ってどういうこと?

aVRは心臓を右上から見ている唯一の誘導なんだ。だからグループには属さず、単独で扱われるんだよ。
そして面白いのは、aVRではP波・QRS波・T波の全部が、基本的に反対向き(下向き)に出ること。普通は上向きになる波も、aVRでは逆向きになるんだ

へぇ〜!全部が逆になるなんて、aVRって本当に特別なんだね!

そうなんだ。だから逆に、aVRで波形が普通どおりに上向きになっていたら要注意!
この場合、四肢誘導(手足に貼るシール)の位置が間違っていることが多いんだ。
だから“aVRの向き”は、シールの貼り間違いをチェックする目印にもなるんだよ

なるほど〜!波形の見方だけじゃなくて、貼り間違いの確認にも使えるんだ!
- aVRは 心臓を右上から見る唯一の誘導
- P波・QRS波・T波がすべて反対向き(下向き)になるのが通常
- もし上向きに出ていたら四肢誘導の貼り間違いを疑う!
今回のまとめ

じゃあ、今回の内容をまとめてみよう!
- 12誘導は 下壁・側壁・前壁・aVR の4つに分けられる
- 同じグループの波形は形が似ていて、一緒に変化しやすい
- ST変化を見つけたら → 同じグループを確認して精度を上げよう!
- 下壁=右冠動脈、側壁=回旋枝、前壁=左前下行枝 の狭窄・閉塞の可能性あり
- aVRは特別な位置。通常は反対向きの波形になるが、もし上向きなら四肢誘導の貼り間違いを疑う

ふぅ〜、4つのグループって大事なんだね!でもね…Ⅱ・Ⅲ・aVFとか、Ⅰ・aVL・V5・V6とかって、正直覚えにくいんだけど…。
12誘導の順番どおりに『Ⅰ・Ⅱ・Ⅲでひとつ、aVR・aVL・aVFでひとつ』みたいに、わかりやすいグループ分けじゃないのはなんでなの?

それはね、12誘導心電図が“波形を映す仕組み”と関係があるんだ。
じゃあ次は、**『12誘導が心臓を映す仕組み』**について見ていこうか!

ということで今回は“12誘導が心臓をどこから見ているのか”を解説しました。
次回は“12誘導が心臓を映す仕組み”について、わかりやすくお話していきますね。
それでは、今回もおつかれさまでした〜!

こんにちは!
看護師歴12年目、現役循環器ナースのどんどんです。
このブログでは、心電図が苦手な看護師さん向けに、心電図の参考書を読む前の参考書をコンセプトに1記事5分程度で読めるように、やさしく・わかりやすく解説しています!
さて、今回は「12誘導心電図って、心臓をどの方向から見ているの?」
をテーマに解説していきます!