この記事では、杉山裕章先生の本『心電図のみかた、考え方』を参考にして進めていくよ。
目次

ねぇサイナスくん、心電図ってどれもギザギザしてて同じに見えるんだけど?

……全然違うよ。同じに見えるのは、まだ基準を知らないからだね。

じゃあ、その基準ってやつを先に教えてよ。…あ、できれば3分以内で。

は、早いな…。まぁいい、まずは“洞調律”から始めよう。これが基本中の基本だ。

どうちょうりつ? 名前からしてお堅そう…もっと面白そうな波形からじゃダメ?

ダメ。基礎を知らずに応用から入っても、必ずつまずく。まずは一番大事な“基準”を覚えるんだ。

はいはい、真面目だねぇ。じゃあ、その“基準”ってやつを見せてもらおうかな。
洞調律を見分ける3つのポイント


まずはこの波形を見てみて。これが洞調律なんだ。

ふ〜ん…ギザギザしてるねぇ。

いや、それだけの感想!? ちゃんと見るんだよ。

はいはい。それで、どうやって“洞調律”ってわかるの?

じゃあ、洞調律を見分けるポイントを3つ教えるよ。

3つだけ? それなら覚えられそう。

1つ目、P波があること。これは心房がちゃんと動いてるサインだ。


あ、あの小さい山みたいなやつね。…正直、見えないときあるけど。

だからこそ意識して探すんだ。次、2つ目はRR間隔が一定であること。つまり心拍のリズムがそろっているってことだね。


RR間隔って何?

RR間隔っていうのは、QRS波とQRS波の間の間隔のことだよ。つまり、“心拍と心拍の間の時間”だね。

なるほど、リズム感チェックってわけか。

そう。そして3つ目、PQ間隔が5マス以内。心房から心室に電気が伝わる時間が正常ってことだ。


…5マスって、なんでマスで数えるの?

1マス=0.04秒っていう決まりがあるから。5マス以内なら0.20秒以内で正常ってわけ。


ふむふむ…。つまり、小さい山があって、リズムがそろってて、間隔が5マス以内ならOKってことね。
まとめ:洞調律の3つの見分け方

- P波がある
→ 心房が規則的に動いている証拠。 - RR間隔が一定
→ QRS波とQRS波の間隔がそろっていて、リズムが安定している。 - PQ間隔が5マス以内(0.20秒以内)
→ 心房から心室へ電気が正常な速度で伝わっている。
洞調律ってなに?

ところで洞調律ってなんなの?

簡単に言うと、心臓の電気信号が“正しい順番”で流れている状態のことだよ。

正しい順番?

心臓にはリーダー的存在の“洞結節(どうけっせつ)”ってのがいて、こいつが『トン、トン、トン』って指示を出してるんだ。その指示どおりに心房と心室が動いているのが洞調律。


なんか楽団の指揮者みたいだね。

そうそう。ちゃんと指揮者がいて、その指示で心臓を動かす仕事をしてる…そんなイメージだね。

ふーん、つまり心臓がルールどおりに動いてるってことか。

そのとおり。だから洞調律は“正常なリズム”の代名詞なんだよ。
洞調律の正常値、どこまで覚えればいい?

ねぇサイナスくん、洞調律の正常値って覚えた方がいいのかな〜?

教科書的には、洞調律の正常値ってこんなにあるんだよ。
- P波の幅(0.75mm未満)、高さ(2.5mm未満)
- QRS波の幅(2.5mm以下)
- T波の形(左右対称)
- PR間隔(3〜5mm)
- RR間隔(3〜5マス)
- QT時間(0.36〜0.44秒)…などなど。

ちょっと待って!? 多すぎでしょ〜!こんなの全部覚えるなんて絶対ムリ〜!

安心して。最初から全部覚える必要はないよ。まずは最初に説明したP波がある・RR間隔が一定・PQ間隔が5マス以内、この3つだけ覚えれば十分だよ。

な〜んだ、よかった〜! それなら覚えられそう!
これで迷わない!P波の探し方

3つのポイントを教えてもらったんだけど、P波がどれだかわからないときがあるんだよね。

じゃあ、P波を見つけるコツを教えていくね。

えっ!そんなのあるの?

うん、あるんだ。まずはQRS波を探してみて。


QRS波はこの一番大きい波形だね。

そう。このQRS波の後には必ずT波がくるんだ。


必ずくるの!

そう。これが波形を見るときの法則のひとつ。QRS波の後には必ずT波がくる。そして、このT波と次のQRS波の間にある波形は、なんだと思う?

あー、それがP波になるってことね!


そういうこと。P波を探すときは、まずQRS波とT波を見つけて、その間を確認すれば見つけやすいんだ。
まとめ:P波を見つけるコツ
- 波形の法則:QRS波の後には必ずT波がくる。
P波を見つける3ステップ
- QRS波を探す
→ 一番大きくて目立つ波形がQRS波。 - QRS波の後にT波を確認する
→ 法則どおり、QRS波の直後にはT波が続く。 - T波と次のQRS波の間を探す
→ この間にある小さな山がP波。
今日のまとめ

ふぅ〜、なんか一気にいろいろ教わった気がする。

じゃあ最後に、今日のポイントをまとめておこうか。
まとめ:洞調律の基本
- 洞調律とは?
心臓のリーダー「洞結節」が規則正しく電気信号を出し、その指示どおりに心房と心室が動く正常なリズム。指揮者が合図を出して心臓を動かすイメージ。
- 洞調律を見分ける3つのポイント
1. P波がある(心房が規則的に動いている)
2. RR間隔が一定(心拍リズムが整っている)
3. PQ間隔が5マス以内(電気が正常な時間で伝わっている)

- 正常値は全部覚える必要なし
教科書には多くの数値があるが、初心者はまず上記3つを優先して覚えればOK
- P波を見つけるコツ
波形の法則:QRS波の後には必ずT波がくる
①QRS波を探す → ②T波を確認 → ③その間の小さな山がP波


よし、なんか洞調律がちょっとわかった気がする!

うん、その調子。その基準がわかれば、これから他の波形も見分けやすくなるはずだよ。

じゃあ次はもっと変わった波形、見せてもらおうかな〜。

…また応用から行こうとしてるな。まずは復習からだよ。
おわり

今回はここまで!おつかれさまでした〜
完璧じゃなくていいんです。ゆっくり覚えていきましょう!
こんにちは!
看護師歴12年目、現役循環器ナースのどんどんです。
このブログでは、心電図が苦手な看護師さん向けに、やさしく・わかりやすく解説しています!
今日は、心電図を学ぶならまず最初におさえておきたい波形――「洞調律(どうちょうりつ)」についてお話ししていくよ〜!